マキサカルシトールを含む医薬品の製造方法の特許権者である被上告人(原告・被控訴人)が,上告人(被告・控訴人)らの輸入販売等に係る医薬品の製造方法は,上記特許の構成と均等なものであり,その特許発明の技術的範囲に属すると主張して,上告人らに対し、当該医薬品の輸入販売等の差止め等を求めた事案(第一審は,被上告人の請求を認容,控訴審は,控訴を棄却)の上告審で,均等の第5要件についての具体的判断方法を示し,被上告人(原告)が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の上告人(被告)らの製造方法と異なる部分につき,客観的,外形的にみて,上告人(被告)らの製造方法に係る構成が特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながら,あえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたとの事情はうかがわれないと認定し,上告を棄却した事例。
H29.3.24 マキサカルシトール事件(平成28年(受)第1242号 特許権侵害行為差止 請求事件 最高裁判所第二小法廷)(PDF)
[除斥期間経過後の無効の抗弁,権利濫用の抗弁]
商標法47条所定の5年の除斥期間が経過し,商標法4条1項10号違反を理由とする無効審判請求権が消滅した場合に,侵害訴訟の場で,当該無効理由を主張し,商標権の権利行使を阻止することができるかという問題について,商標登録が不正競争の目的で受けたものである場合を除き,無効の抗弁(商標法39条が準用する特許法104条の3の抗弁)は認められないとしつつも,同号所定の周知表示の主体が自己であるとする権利濫用の抗弁が認められる場合があることを認めた判決
経時的記載があるクレームについて,形式的にはクレームに経時的要素の記載がある場合でも,当該製造方法による物の構造又は特性等が明細書の記載及び技術常識を加えて判断すれば一義的に明らかである場合には,特許法36条6項2号との関係で問題とすべきプロダクト・バイ・プロセス・クレームと見る必要はない,として,原告の明確性要件違反の主張を排斥した事例
[PBP,クレーム,明確性要件]
H28.9.20二重瞼形成用テープ事件(平成27年(行ケ)第10242号 審決取消請求事件 知的財産高等裁判所第3部)(PDF)
知財高裁が,大合議判決として,均等侵害成立のための5要件に関し,主張・立証責任の所在,並びに第1要件(非本質的部分)及び第5要件(特段の事情)の具体的判断基準等を示した事例
[大合議,均等,侵害]
H28.3.25 マキサカルシトール事件大合議判決(平成27年(ネ)第10014号 特許権侵害行為差止請求控訴事件 知的財産高等裁判所特別部)(PDF)
いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームについて,物の発明から物を生産する方法の発明に変更する訂正を,「明瞭でない記載の釈明」にあたり,また「実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するもの」にはあたらないとして,認容した事例
[PBP,訂正,カテゴリー変更]
映画の著作物について複製権侵害が認めた事例著作権侵害について,著作権者自らが侵害品と競合する製品を販売していない場合であっても,著作物につき利用許諾をして利益を得られる蓋然性があれば,著作権法114条2項の適用が認められる旨判断した事例商標権侵害について,商標権者自らが登録商標を付した競合製品を販売しておらず,通常使用権を黙示に設定していた場合について,商標法38条2項の適用が認められる旨判断した事例[映画の著作物の複製権侵害,2項損害論]
H26.4.30 桜吹雪事件(平成24年(ワ)第964号 著作権侵害差止等請求事件, 東京地方裁判所民事第29部)(PDF)